2025年4月12日土曜日

報われない才能を描いた作品、『秒針は夢をみる』について

 どうも。最近は確定していないFF9リメイクの情報をいつでも探しています。Youtube動画、Xのポスト、こんなところにいるはずもないのに。時計塔プロジェクトの吉岡です。

 今回は時計塔プロジェクト発足時に発表した『秒針は夢をみる』と、作品のテーマの根幹である「叶わない夢」について書いていこうと思います。


『秒針は夢をみる』について

 このゲームはRPGツクール2000というツールで作成された見下ろし型のアドベンチャーゲームになります。記憶を失った少女が少年と共に時計塔へ赴き、失った記憶を取り戻すと共に、少女が抱えていた残酷な真実を目の当たりにする。そんなお話でござます。
 制作の経緯や苦労話などは今回の動画や以前投稿した大変だった制作の話をしたときに語っているのでそちらを見ていただけると。

作品のDLはこちらから(FreeDL):https://www.clocktower-project.com/g-1

 この作品の大きなテーマとして、「夢」というものがあります。これは叶えたいもの、という意味での夢です。
 同じタイミングで『ウェンディシンドローム』という楽曲も発表したのですが、この曲は夢を諦めるその瞬間にまみえる現実逃避のような希望について書いた作品で、『秒針は夢をみる』もそんな耐え難い瞬間から始まる物語になります。この作品の主人公も、そんな苦悩を抱えている1人、というわけです。この描写や設定は時計塔プロジェクトを発足するまえの自分と重なる部分がありますね。
 「夢が叶わない」というのは夢を追っている人には相当な恐怖で、本気でやればやるほどその痛みも強いものになると思います。プロジェクト計画時(作品制作時)の自分は、創作自体が好きで、だからこそ時計塔プロジェクトを立ち上げることにわくわくもあったのですが、それと同時に、このさき同じように創作をし続けられるのだろうか、自分にはそれを叶えるだけの才能が本当にあるのかという悩みに苛まれていました。

 元々バンドマンとして(今も形は特殊ですがバンドマンではありますが)、いろいろな挫折を経験していくなかで、自分に才能はあるのかという問いかけはどうしても避けては通れないものでした。もちろん、制作する作品は間違いないものだという確信があるからこそ、それでも続けてこれているのですが、運やタイミングの要素はあれど、ずっと結果が出ないことの原因…というより改善をしていかなければならないと思うことも多くあり、それは大体が自分に才能があればクリアできるものばかりでした。

 と、ここで少しだけ話が変わるんですけど、僕は昔から自分の人生は自分だけのもので、そこで体験するものは自分にしか得られないものだと思っています。話変わり過ぎか。
 それで昔、つれづれ推進委員会で書いた「純粋フィルム」という作品のあとがきにも同じようなことを書いたのですが、同じ場所で同じ体験をしたとしても、そこに本人の人生や感覚などが乗っかり、自分の中だけに蓄積される唯一無二の経験になるわけです。

 さて話を戻しまして、僕は才能への疑問や挫折という経験を経て、最終的にそれすらも表現の一部にし、作品に昇華してやろうと思ったわけです。失敗を失敗として描き、積み上げたものが全て無駄だと分かった瞬間になにが残るのか、そういった、僕だけの体験を表現しようとこの『秒針は夢をみる』を制作しました。
 そうして成功も失敗すらも創作の糧にしていくことで、自分はもう怖いものはなくなりました。それでも、やはり不安になったり、実力が及ばず悔しくなったりしますが、それもいつかの創作のネタになる。そうすることで、自分は天国も地獄も全てひっくるめて創作を骨の髄まで味わい尽くそうと、最終的に時計塔プロジェクトを立ち上げるに至りました。

 以上が『秒針は夢をみる』のテーマである夢のお話。
 僕はなんだかんだ現実逃避を主軸にした作品をつくることが多いのですが、どれも直接的でなくとも現実の香りがする作品になってしまいます。それはきっと、こういった僕自身の創作の姿勢の現れなのかもしれませんね。
 そんなわけで、もし興味が湧いた方はちょっとでもプレイしていただけたらと思います。謎解きもあるので、苦手な方、ストーリーだけ楽しみたい方はこのブログの中に攻略情報を書いた記事があるのでそれを参考に進めてみてもよいのかもしれません。
 その先で、あなたが見ている夢について考えてみてもらえると嬉しいです。

 それではまた次回、亡霊横丁でお会いしましょう。

時計塔プロジェクト 吉岡
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2025年4月4日金曜日

正しい変化ってなに?

 先日作業中にふと足元をみたら足の指の隙間が赤黒くなっていて「え、出血してる!?」と焦ったのですがよくみたら影でした。みなさんも作業のし過ぎには気を付けましょう。時計塔プロジェクトの吉岡です。

 どんなものにもタイミングというものが存在しますが、最近は多様な締め切りのタイミングが重なっててやばいです。なぜタイミングというのは偏りがあるのでしょう。ゲーム制作において偏りが激しい乱数は修正するべき要素なのでデバッグするべきだと思います。
 ええ、そうですね。人生はC#言語で書かれてないので無理ですね。おとなしく締め切り守ります。

 そんな中で収録した今回の亡霊横丁のアトリエ。間に弾き語りの配信も挟んだりしましたが、そちらの方面でも少しずつ理想の形が整いつつあります。僕が将来隠居する場所はここなのかもしれません。


『正しい変化ってなに?』

 正しい、という定義が非常に難しくはありますが、まぁいつものように時計塔プロジェクトをやっていく中での変化について書いていければと思います。

 動画の冒頭でもお話はしましたが、前提として、一個人としてはあまり変化を好まない人間だったりします。中学~高校時代で自分の人格を形成していくなかで、そこで形づいた価値観や人格が自分のなかでしっくりきてしまい、そこから自分自身はほとんど変わっていないように思えます。考え方も、価値観も誤差はあれどずっとそのままです。社会的にはあまりよくないかもしれませんが、僕としてはこの"吉岡大地"が一番過ごしやすい。とまぁ、ここを深堀りしていくと本論から外れるのでまたの機会に…。

 さて、そんな僕ではありますが、こと時計塔プロジェクトにおいて、変化というのはポジティブな意味合いを持っており、し続けなくてはならないものだと考えています。

 とはいえ、ただ変化すればよいというものではなくて、良い変化と悪い変化をしっかりと線引きし、今まで変化をしてきました。
 良い変化というのは、あくまでもこのプロジェクト内におけるものですがニュアンス的には"変遷"に近いもので、過去の作品や思想、やってきたことをしっかりと踏襲したうえでブラッシュアップをする、アップデートをしていくようなものが良い変化なのだと思います。
 逆に悪い変化として、上記のような変遷の文脈を一切無視した全く新しいことをする、というのを悪い変化だと定義(というと堅苦しいですが…)しています。

 亡霊横丁のアトリエなんかは唐突で全く新しい変化だという印象を持たれるかもしれませんが、発想の大元は『時計塔の街にて』という"作品"から来ているので、流れ的にもしっかりつながりがあります。

   ・ ・ ・

 さて、そんなプロジェクトにおいて、一貫して大きく変化させ続けてきたことが一つあります。それは、僕自身の技術や知識の蓄積です。
 これに関しては、あればあるだけプラスに作用していくものなので、何も考えず、ただただひたすらに積み重ねていっています。もちろん使い方次第ではマイナスになることもあるかと思いますが、それは使い方が間違っているだけなので、そこを矯正すればいいだけの話なのです。クオリティの高いプラグイン(ツール)を積極的に導入する、なんかも環境面の話にはなりますが、これに該当するのかなと。
 ほかにある変化といえば、制作における感性の変化などがあるかと思います。これに関しては、技術・知識と比べてかなり慎重かつ長時間にわたってじわりじわりと変化をするように意識しておりまして、他作品からの影響とか、人からの影響等々があったとしても、それをこのプロジェクトに落とし込むまでにかなりのフィルターを通したうえで反映させるようにしています。(そもそも作品を作るのにも時間が掛かるので、プロジェクトの性質上良くも悪くもここは避けられない部分ではありますが…)

 そんな変遷をしていく中で、蓄積したものや変化が一番大きく表に出たのは、『ロストピア』を発表したときかなと個人的には思っています。そして、この作品を皮切りにこのプロジェクトはさらに変化していっているように思います。
 今現在においてですが、時計塔プロジェクトの"変化"を象徴する作品を選ぶとしたら、間違いなくこの楽曲なのかなと。
 Unityを始めたり、シンプルに楽曲制作のスキルも上がっていったなかで出来上がったこの作品は、培ってきたものが結晶のように合わさって出来上がったような感覚がありまして、発足時のウェンディシンドロームのような存在感が個人的にはあります。

 とか言いつつ…初めて合成音声を使った『恋するエコー』やコンセプトを明確に打ち出して制作した『青春はポップソーダ』等々、なんだかんだ作品を出すたびに変化を昇華させたものを発表しているような気も…。
 僕自身は変わりたくないけど、新しいことはしたいという妙な精神性でこのプロジェクトは成り立っています。

 とはいえ、常に良い変化をし続けることは難しい。そもそも、"変化すること"そのものが良くない結果を生むこともあります。
 そう考えると、時計塔プロジェクトにおいて"作品の位置づけや方向性"は変化させてはいけないのかなと思います。元々このプロジェクトのターゲットは僕自身で、僕が感動できるものという意思のもと制作しているので、ここが変わってしまうとプロジェクトの根幹が変わってしまうことになります。なので、変えてはいけない…というより、そもそも変えることが難しい要素になっていますね。
 それに付随して言えることは、作品自体を指針としているこのプロジェクト自体も、きっと変わらずそこにありつづけるのかなと思っています。どんな時代になっても、変わらず時計塔プロジェクトの作品があり続けられるように、上手に変化して、上手に変化せずやっていけたらという想いです。
 
   ・ ・ ・

 最後に、いったい何が時計塔プロジェクトにとっての正しい変化なのかと考えたときに、最終的に誰のために、何のために変化をするのかという理由をしっかりと持っておくことが大切なのだと思いました。
 自分が楽をしたいがためにする変化は、大抵ほかの人が変化によって不足したものを補填していたりするものです。そういったことがない変化こそ、本来するべき変化で、様々なものが好転する正しい変化なのだと思います。もちろん、効率化や業務を圧縮することは大切なのですが、それを口実に甘えたりは決してしないよう、僕自身肝に銘じて変化をしていければなと思います。

 そんなわけで、今回のところは終わろうと思います。来週は『秒針は夢をみる』のお話と、報われない才能の昇華について話をする予定です。ではまた。

時計塔プロジェクト 吉岡
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2025年4月2日水曜日

一人ですべてやる意味はあるの?

 どうも。最近、「そういえば…」と、Youtubeにあげたココロノユライの視聴データを見たのですが、大体の人が動画を94%まで(ほぼ最後まで)見ているとのことでした。Youtubeのおすすめが需要をピンポイントで突いており関心しています。時計塔プロジェクトの吉岡です。

 といいつつ、1か月ぶりにアナリティクスをみるくらい僕自身がそこまで数字に頓着しなくなりつつありますが、現代においてその感性はデメリットになりうるので難しいところだなと思ってます。ただ、そんな中で僕の作品を見てくれる方は、きっと同じ感性なのかなとも思ったり。
 難しい潮流ではありますが、僕自身は数字で感動を左右される人間にならないよう心掛けていきます(自戒)

 そんなわけで本題に行きましょう。


『一人ですべてやる意味はあるの?』

 変化の話かと思いきや前回のお話です。こういうパターンもあるぞ。備えていけ。
 時計塔プロジェクトをしていくにあたって、避けては通れない「一人」という要素。お手伝いさんすらいないガチソロプロジェクトを運営していくなかで、どういった理由で一人でやっているのか、また、どうやって成り立たせているかについて書いていければと思います。

 そもそもなんで一人で始めたかの経緯をさっくりお話すると、プロジェクト発足当時、組んでいたバンドが解散いたしまして、このあとの創作活動どうするかなと悩んだ結果、どうせ新しいことをするのであれば惜しみなくやりたいことをやってみようということで、ずっとやっていた音楽に加えて、空き時間に楽しんでいた小説とゲームを加えて始めたのがこのプロジェクトとなります。
 この三つは僕としては表現方法の違いでしかなかったのですが、いろんな人と話していくなかでこの感覚は理解してもらえないと薄々感づいていました。なので、バンドと違って簡単に協力してくれるような人は現れないだろうと思いつつ…いつかやっていれば一緒にやりたいと思ってくれる人がいるはず!と始めてそのまま今に至ります。なんでや。

   ・ ・ ・

 とはいえ、プロジェクトを一人でやっていくにあたって悪いことばかりではありません。一般的な部分に加えて、このプロジェクトにおける一人やるメリット・デメリットを挙げていきたいと思います。

 まずはメリット。これはどこでもそうだとは思いますが、やりたいことができるというのはやはり大きいです。時計塔プロジェクトを始めたのも前述の通り、やりたいことを惜しみなくやるためなので、それを叶えられるという点で一人なのは大きなメリットです。(一人でも叶えられることがやりたいこと、という点も大きい気がしますね)

 あとこれは自分でも助かるなとという部分ですが、スケジュールの自由度があるというのはなかなかのメリットかなと。
 僕はみなさん知っての通りプロジェクト外でもいろいろな草鞋を履いている関係もあって、スケジュール調整が針の穴を通すような時が多々あります。そんな激動のスケジュールでも隙間時間に制作をいれたり、逆にほかの締め切りが多いときは後回しにしたり等、世捨て人になりたい一方で社会性も捨てがたい僕にとって、このスケジュールの自由というのはとてもやりやすいメリットなのです。

 他に自分ならではの視点かなと思うものでいうと、納得いくまで作り直せるというのもメリットです。僕は自分の制作物は気に入らないと最初から作り直す癖があるので(コンペで作る楽曲とかも実はめっちゃ作り直して正解ににじり寄ってます)、個人ですべての工程をやるとなったときは、そこも自由にやり直せるのがめちゃくちゃいいところかなと。
 どちらかといえば僕はめっちゃ気遣いしいなので、人とやるとやり直したくても絶対に言えない気がしています。逆の立場だと、人のやりたいことに沿う形でやったのにやり直しって結構残念に思ってしまうなぁとも思うので、改めて難しいところだなぁと。

 やり直しについて書いててふと思い出したのですが、幼少の頃、おばあちゃん家においてあったレゴで家とか武器とか要塞みたいなものを作ったりしてたんですけど、下のいとこに結構壊されてたんですよね。でも僕としてはそれでも全然よくて、むしろその作品で得た積み方やつなぎ方を使って他のものを作りたいみたいな、強くてニューゲーム的な感じで新しいものを作るのが好きでした。きっとやり直し癖や自分の作ったもので得たものを使ってもっと良いものを作るみたいなマインドはここらへんからすでに培われていたのかもしれません。

 メリットが長くなってしまいました。他の細かいことは動画でお話してるのでそこで聴いてもらえると嬉しいです。

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    続いてデメリット。これも誰もが思うことを最初に挙げますが、一つひとつの制作がとても重いということですね。どの工程も僕が担当するので、チームで400mリレーをやってるところに一人で乗り込んでるみたいなもので、なかなか無茶なことが多々あります。
 とはいえ、僕自身作業を圧縮したり省略することに余念がないこともあって、なんとか周回遅れにはならないくらいでなんとか食らいついています。少し前の話ですが、事務仕事を新人に教えたとき、吉岡さんのPC操作アクションゲーム並に早いですねと引かれたこともありました。その時は「おいおい…このスピードじゃないとここではやっていけないぜ?」などとは言えず「早くやってるフリしてるだけですよ」という謎の回答をしました。

 あとは、ここは一長一短な部分ではありますが、現状では金銭面でのデメリットも大きいです。このプロジェクトの収益は基本的にプラットフォーム周りの整理や配信サイト周り、サーバー維持などのランニングコスト系に優先的にあてがわせて頂いているのですが、この維持がなかなかどうして難しかったりするわけです。「現状維持とは常に少し進むことを意味」すると誰かが言っていた気がしますが言いえて妙とはこのことだなと。
 これに関しては、このプロジェクト自体のバランスも起因していますかね。自己の価値と社会的な価値とのシーソーゲームはどこにでも、誰にでもあると思いますが、こと時計塔プロジェクトに関しては自己の価値の比重がめっちゃ重いので…まぁ…ね、そういうことです。でも"吉岡大地"本人としてはしっかりとバランスをとっているのでご安心ください。お仕事頑張ってます。

 あともう一つデメリットをあげるとするならば、方針を間違ったときにすぐに止められない(気付けない)というのがデメリットかなと。雁首揃えた大人たちでも間違えることがあるんだから、一人だとなおさらやばい。客観的であろうとはしていますが、結局は主観の中での客観なので、もし「こいつやっとんなぁ…」となったらDMでもコメントでもテレパシーでも矢文でも伝書鳩でもいいので止めてください。
 とはいえ、時計塔プロジェクトはそもそもが「制作する作品」それ自体を指針にしているので、作品が変わるということは、僕自身の感性の変化も意味するので、そういった意味では性質的に方針が大きく変わることはないのかなとは思っています。

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 そんなわけで、なぜ一人でやっているのかというところがなんとなく分かっていただけたかなと思います。まずデメリットを超えるメリットがあるのは言わずものがなですが、デメリットも工夫次第でなんとかなってるのも大きいのかなと思います。
 それは僕自身がそういう環境づくりを頑張っているところもありますが、これを見てくれているみなさんがとても寛容で、放任主義的にやらせてもらえているおかげもあるのかなと思っています。徐行運転でも待ってくれていてありがとうございます。

 一人で大変なこともありますが、だからこそここまで続いている側面もあるので、引き続き、自分を楽しませられる良い作品を作っていきたいと思います。

 それではまた、亡霊横丁のアトリエで会いましょう。

時計塔プロジェクト 吉岡
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